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実弟が明かすメリーさんの前半生
■□警告:以下、メリーさんの謎の核心部分について書かれています。彼女の秘密を知りたくない、伝説は伝説のままでいて欲しい、と考える方は読み飛ばしてください□■

昨日、大宅文庫に行った際、偶然<「メリーさん」の前半生を実弟が語る>という雑誌記事を見つけてしまった。私が知らなかっただけで、彼女の人生は謎でもなんでもなかったらしい。

私が彼女の故郷に取材に行ったとき、弟さんは既に亡くなっていた。家を継いだ甥っ子は、取り付く島もなく取材を拒否した。そこで彼女が故郷を捨てた理由は、周辺取材から推測するしかなかった。

私自身は彼女の前半生にほとんど興味はなく、むしろ彼女の伝説がふくらんでいくシステムの方に惹かれていた。
とはいえ、一年早ければ、弟さんに話を聞くことが出来たのだ、と思うと少々残念である。

掲載誌は「アサヒ芸能」2006年3月2日号だ。
この記事によると、私が「消えた横浜娼婦たち」の取材で調べたこと、推測したことはほとんど間違いがなかったことが分かった。
興味がある方は探して読んでみたらどうだろう。

以下、同記事から興味深い記述を抜粋する。



●家庭環境
「親は農家でした。姉(メリー)はこの家で育ちました。女4人、男4人の8人兄弟で、姉は長女です。兄弟のうち3人は亡くなりましたが、まだ5人健在です」(実弟)

「父親はまだ姉が15歳くらいのときに亡くなりました。姉は青年学校を卒業後、地元で女中奉公のようなことをしていました」(実弟)
 
メリーさんは1921(大正10年)に生まれた。地元の小学校高等科を出たが、貧しかったので中学には進めず、青年学校に進んで卒業したという。
「父親はまだ姉が15歳くらいのときに亡くなりました」というのは、私が調査したとおりだった。
ただし彼女の最終学歴が、「青年学校卒」だということは分からなかった。

→この青年学校だが、この記事を読むまで全く知らなかった。調べてみたところ、戦前の「尋常高等小学校」において、尋常科を卒業した生徒の進路だったそうだ。wikipedia によると
<青年学校は、尋常小学校(のち国民学校尋常科)卒業者を入学資格とし修業年限を男女とも2年とした「普通科」、普通科修了者または高等小学校(のち国民学校高等科)卒業者を入学資格として修業年限を男子は5年女子は3年とする「本科」(地方によっては1年の短縮を認められた)のほか、本科修了者程度を前提とする修業年限1年以上の「研究科」や、修業年限に規定のない「専修科」を設置するとした>
という。

メリーさんの通った学校は、ほぼ間違いなく、岡山県久世青年学校(現在の岡山県立久世高等学校)だと言い切れる。彼女の実家から通えるのは、ここしかないからだ。

●娘時代

子供時代から、彼女は派手な格好が好きだったという。
「裁縫なんかでもよくしよりました。家じゃいい娘でした。姉は結婚に失敗して、それが元でああなったんだと思います。失敗してなければ、子供でもできていれば、あないなことにはならんのですけども。
 母親が死んだときには、どこにいるのかわからず連絡ができなくて、死に目にも会えなかった。うちに帰ってきたときには、アメリカがどうだとか突拍子もないことを言っていたが、(誰も)本気じゃ聞いとらんかったです」(実弟)

●結婚していた
「地元の国鉄マンと結婚したんですが、子供ができんうちに、2年くらいで離婚しました」(実弟)

●故郷を捨てた原因
「結婚しても、戦時中で、家庭におるわけにはいかず、姉は軍需工場で勤労奉仕していた。姉は器量がよかったし、工場での集団生活の中で、何か悪口を言われたのを苦にして、海へ出て、自殺しようとしたんです。それで婿さんが恐れて、親もとであるこっちのうちへ送り届けてきて、別れたんです」(実弟)
 メリーは離婚してからしばらくは親もとにいたが、そのあとに兵庫の西宮へ出て、何年間か女中奉公をした。52年ごろ、横浜・横須賀方面へと旅立った。
「別に、あちらに世話をしてくれるような知り合いはなかったと思うんですけど、自分が思う気ままに出ていったんです」(実弟)

→「映画『ヨコハマメリー』の昭和38年来浜という調査結果は間違いで、おそくとも昭和30年には横浜に来ていたはず」という私の取材結果が、より正しかったことが裏付けられた。



私の調査をまとめた書籍(2009年発売。現在絶版)の電子書籍版です。

●クリーニング屋の山崎さんと食い違う証言

映画『ヨコハマメリー』のなかで演出の都合上、意図的にカットされたと思われる証言がある。「メリーさんは毎年末、故郷に帰っていた」というクリーニング店の女将・山崎さんの言葉だ。
詳しくは「消えた横浜娼婦たち」に書いたとおりなので繰り返さないが、メリーさんの実弟によると、そのような事実はなかったという。

「田舎とは緑を切ったような形になってました。毎年なんか帰ってません。こっちへは2回くらいしか里帰りしてません。白いお化粧しよって、白い服を着て帰ってくる。ここらの田舎では見えんような格好やから、うちの者はどうせなら帰らんようにと伝えてましたから」(実弟)

この「白い化粧に白装束のままの帰郷」という部分は、山崎さんの証言と一致している。
山崎さんは「故郷の岡山に帰るときもあの格好のままなんですよ」と話していたが、それを裏付ける証言が2チャンネルの過去ログにある。
 ↓
15:ただの通りすがり:03/04/15 15:38downup
12〜3年前、岡山県の津山駅のホームで似たような人に会った。
周りの人は思い切り引いていたが‥。
途中まで同じ列車で行ったが、化粧の匂いがすごかった。

とにかくびっくらこいたので忘れられないですじゃ。
もう一度見てみたい。


113:名無しさん@お腹いっぱい。:03/11/20 12:58downup
以前に岡山の津山駅で見かけたとレスした者ですが、
その時も大きな高島屋の紙袋2つもっておられました。
そして白のロングドレス。
田舎の駅でそんな恰好だから、もう目立つ目立つ。
狭いホームの上で目のやり場に困った位だった。
丁度年末の帰省の時でしたが、一体どんな人なのかと不思議だったけど
皆さんの色々なお話から、横浜の有名人と知りました。
まだお元気なのなら同県人としてうれすいだす。

彼女の故郷は、津山駅から電車で一時間ほどの場所だ。横浜から帰郷する場合、岡山駅で下車し、津山を経由する必要がある。

●故郷の人たちは、彼女の仕事を知っていたのか

この部分も実弟の証言と私の取材が食い違っている。
彼女の実家の斜め向かいにある一族の本家の者は、メリーさんが娼婦だったということを知っていた。

しかし、同記事によると
(姉は)「メリーと呼ばれていたんですか、ほー。本人はそんなこと全然、言いよりませんからな。どないなことをしていたのかは、本人がこっちへ帰ってきたときの格好を見て、こっちの想像でしかなく、わからんわけです。姉の口からも、何の仕事をしているかは聞いたことがありません」(実弟)
とのことで、証言が矛盾する。
あるいは他の親族は彼女の仕事を知っていたが、弟さんが知らなかっただけかもしれない。

●仕送りのこと

「初めのころ、3回か4回くらい現金為替で送ってもらったことがありますけれど、それは姉の名義で貯金を作った。何十万も何百万も送ってもらったことばない。そんなによくしてもらっていれは、老人ホームへは入れませんよ。こっちに帰ってきたときには全然、貯金なんてなかった。お金は衣装にかけたんだと思います」(実弟)

彼女の娘時代が明らかになったことで、取材はほぼ完遂した。取材し残したのは、老人ホームの場所と10年間の入所生活の様子だけだ。
私の推測では、晩年のメリーさんはホームでの生活になじめず、生きづらさを感じていたはずだ。考えてみて欲しい。最晩年まで一貫して奇異な格好を貫き通し、都会で孤高を生きたメリーさんが、山里で野良仕事を引退した老婆たちとなじめるのだろうか。

多くの場合、水商売上がりの女性は老人ホームの生活になじめない。ましや一匹狼だったメリーさんであればなおさらである。
この推測を裏付ける調査だけが、まだ終わっていない。
横濱 | comments(0) | trackbacks(0)
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